日々ちょうこく

名古屋のお坊さんのブログです。文章練習も兼ねて、見た事、聞いた事、思った事を書いていきます。 たまに抹香臭い事も書きますよ。

「助かりました、ありがとう。」と素直に受け取るということ。

お月参りでお邪魔しているあるお宅で、ご主人が脳梗塞になり、一段落したら自転車で転んでしまったというおばあさんのところがあります。

その方は息子娘3人と孫もいらっしゃいます。続く災難の中、息子娘や嫁さんに助けられて、大事になる事無く元気を取り戻されました。

息子娘に迷惑をかけたとしょんぼりしているおばあさんは、「やっぱり親は早めに死なないかんな」とそんなことをぽろっと言っていました。

しかし、そのままお話を聞いていると、そのおばあさんは40歳になるくらいで親が亡くなってしまい、育てた恩を返す事ができなかったと悔やんでいるそうです。

「〇〇さん(そのおばあさん)も、早くに死んでしまったら息子さんたちも恩を返すことができなくなってしまうのでは無いですか。」と、そんなことをお話しさせてもらうと、おばあさんはハッとしていました。

そして、いつの間にか自分がしたことが自分に還ってきているんだな、ありがたいなと納得した優しい顔になっていました。

 

「親に恩を返したい」という思いと「息子娘に迷惑をかけたくない」という思いが、同じ人から出てきています。それは、一見綺麗な、誠実な思いの現れにみえますが、この矛盾した思いの根っこには、自分本位の目線があるのだと思います。

「(私の気持ちを晴らしたいから)親に恩返しをしたい」「(私が申し訳ない気持ちになるので)息子娘に迷惑をかけたくない」ということだと思います。

「恩を返したい」とか、「迷惑をかけたくない」ということがダメな事ではありません。「私が」という自分本位の気持ちが、どうしても入ってしまうのが私たちなのだということに、気付かなければならないのだと思います。

 

 

「息子娘に迷惑をかけたくない」という親さんを見るといつも、

「育ててもらって、成長していくのが子どもの役目なんだったら、恩を返したいという子どもの気持ちを、素直に受け取るのも親の役目」

こんなことを考えます。