日々ちょうこく

名古屋のお坊さんのブログです。文章練習も兼ねて、見た事、聞いた事、思った事を書いていきます。 たまに抹香臭い事も書きますよ。

認知症のおばあさん。

お参り先で、少しだけ認知症が始まってきた方にどのように対応したらいいか迷うことが多々あります。

今日お伺いしたところは、ご主人にをお浄土に送られた88歳のおばあさんのお宅でした。息子さんと同居していますが、お仕事の関係上、だいたいおばあさんと二人きりでお勤めをしています。

去年3回忌が終わり、その時にはおばあさんも心持ち肩の荷が下りたような表情をされていました。

お参りを続けてたある日、「おじいさんは今年で90歳になる」「ぼけて大変だ」と言い始め、今日になって「おじいさんはどっか仕事へ行ってる」と言われました。

その時に「おじいさんは3年前に亡くなった」と、ハッキリ言うことがどうしてもできず、「そうですか」と答えをはぐらかすだけにとどめてしまいました。

仮に私がはっきりとおじいさんが亡くなっていることを伝えて、おばあさんはどんな気持ちになるのでしょうか。どんな反応をするのでしょうか。

ちゃんと伝えなければならない、亡くなったという事実は受け止めなければならないということはわかっているのですが、忘れてしまった事実をいきなり突きつけることはどうしてもできませんでした。そこには、私がおばあさんと真剣に向き合えていないという問題もあるのだと思います。

私に引き当てて考えられたとしても正解はでないのでしょうが、またそのおばあさんとなんとか向き合って考えなければなりません。

 

認知症が進行していくにつれて、「この人に伝えてもわからないならいいか」という気持ちが出てきてしまう私がいることを教えられました。厳しい問いです。